壊せ、愛ゆえに-前編-■アースダンボール メルマガVOL126■2022年1月号

ダンボールの声って聞いたことある? 無いですよね。 でも確かにあの時、僕には聞こえた気がしたんだ。 壊される役目のダンボールのお城が、 自分を壊す人に向かって『頑張れ、私を壊せ』って、 言った気がしたんだ。 (´o`)п(´o`)п(´o`)п **************************** 僕は滝田俊(たきたしゅん)。社会人2年目の24歳。 ここは子供の教育教材やイベント運営の会社だ。 そして僕の上司の七海(ななみ)主任は聡明で仕事熱心で、 ・・・とても美人だ。 20代後半で主任に抜擢されるキャリアウーマンで、 5才の男の子の母親でもあるシングルマザー。 先に言っておくと、僕は七海主任が好きだ(照 ///ω//) いや、告白なんてとんでも! 今は主任と一緒に仕事できるだけで幸せさ。 _________ さて本題に入ろう。 うちは毎年ある保育園の演劇会プロディースを請け負っている。 その園の一年で最大イベントで年を追うごとに観客も増え、 遂には民間企業にプロデュース依頼する程になった演劇会だ。 そして七海主任の息子の蒼(あおい)くんは今年この園の年長。 今年の演劇会で重要な役を任された。 息子の保育園の演劇会を母親が仕事でプロデュースする。 一見素敵な運命だけど、七海主任も蒼くんも悩んでいた・・・ __________ 数日前、何だか元気がない主任に僕はこう聞いた。 『主任、演劇会プロデュースで何か問題でも?』 『た、滝田君!どうしてそんなこと聞くの?』 『主任を見ればわかります(毎日主任ばかり見てますから!)』 『ご、ごめんなさい、部下に心配されるなんて主任失格ね。 うん、貴方には話しておくわね。聞いてくれる?』 『はい、何でも聞きます!(主任の話なら何でも!)』 『今度の演劇会、息子の蒼も出るの、知ってるでしょ? それはいいの、母親として息子の園の仕事ができるのは嬉しい。 でね、劇中で怪獣がお城を襲って壊すシーンがあるでしょ? 園からは重要シーンだから迫力出したいって要望があってね。 それもいいの、ダンボールで立派なお城を作れるから。 ただその怪獣役っていうのが、息子の蒼なの・・・』 『あれは重要シーンですよ。蒼くん凄いですね!』 『違うの、よりにもよってなの・・・ あの子、虫も殺せないような、とても優しくてビビりな子なの。 テレビで建物倒壊シーンがあると逃げる人々を心配する子なの。 だからこのキャスティングに蒼は落ち込んだの。 "僕、怪獣の役ヤダ、お城壊すのヤダ"って毎日泣いてて・・・ でも私はあの子の嫌がるシーンのセットを作らなきゃならない。 いやセット以前に蒼はお城に触れる事もできないかもしれない。 よしんば蒼が触れるだけで崩れるようなお城を作ればいい? 確かにダンボールならそれができる、でも迫力なんて無くなる。 いやそもそもそんなセットを私情で作るわけにいかないわ。 私は、私はどうしたら・・・』 たかが保育園の演劇会、そんな風に思う人も多いだろう。 でも主任と蒼くんがそう思わないから二人は苦しんでる。 僕はうなずく事しかできなかった・・・ 情けない、自分から聞いておいて・・・ でもこんな時、こんな時こそ主任の力になりたい!! そしてこんな時こそいつも主任が合言葉のように教えてくれる あの言葉が主任自身に必要なんじゃないか。 "真摯に向き合いなさい" 『主任、いつもの主任らしくないですね! 失敗とかできなさそうな事ばっかり考えちゃって。 仕事とはいえ蒼くんの悩みでもあるから仕方無いですけど。 でも主任、蒼くんの勇気が出るように信じましょうよ。 結果じゃなくて蒼くんの挑戦を見守ってあげましょうよ。 蒼くんが勇気を出すために一番大事なのは、 主任自身がこのプロデュースに真摯に向き合う事のはずです。 自分がやるべき事を真摯に精一杯やるしかないじゃないですか! 子供も居ない、結婚もしてない僕じゃ説得力無いですけどね。』 主任はキョトン、とした丸い目をして僕を見た。 そしてすぐに目を細めてこう言った。 『滝田君、あなたいつの間にそんな事言うように・・・ えと、ごめんなさい、そうじゃなくて、あなたの言う通りだわ、 うん、滝田君のおかげで目が覚めたわ!ありがとう!』 98-2 良かった、七海主任、元気が出たみたいだ。 それから主任はいつものようにひたすら真摯に取り組んだ。 でもそれは逃げ出してしまうよりもうんと大変なはずだ。 家では蒼くんを説得したり頑張れと言ったりはしなかった。 話すとしても、皆で何かを作り上げる事の素晴らしさや、 自分の役目を果たす大事さを、ただ素直に蒼くんに話した。 そして自分は演劇会の為にセットや衣装、脚本と向き合った。 そんな母親に触れた蒼くんも次第に自分の役目を理解し、 蒼くんは自らシーンの稽古を申し出、毎日お城と格闘した。 僕も練習用のお城を作って何度も園に持って行った。 園のお友達もみんなで蒼くんを応援した。 そして僕はある事に気が付いた。 それは音。蒼くんがダンボールのお城を壊す音だ。 お城を壊す音が日に日に変って来たのがはっきりとわかった。 なんて言うか、こう、音に力が出てきたって言うか、 違うな、そんなんじゃなくてもっとこう・・・そうだ、 魂、蒼くんの魂がこもって来たんだ。 確かにダンボールなら力いっぱい"あたる"ことができるけど、 こんな風に人の魂をダンボールの音で聞いたのは初めてだった。 クロスして折れそうだった親子二人のベクトルの矢が、 強く重なって同じ方向に進み始めた。 それにしても主任と蒼くん、すげえ親子だよな・・・ 主任が仕事に真摯に向き合うのももちろん凄いけど、 まだ子供の蒼くんが自分のすべき事を理解して 自分の苦手に立ち向かう。そんな事大人だってなかなかできない。 そもそも自分は、どれだけ物事と真摯に向き合っているだろう。 いや、それは後で考えよう。 今は全力でこの演劇会と、主任と蒼くんと向き合おう。 ______________________ そしていよいよ演劇会当日。 会場は満員御礼、園のみんなもやる気満々だ。 でももうすぐ開演だっていうのに、主任がまだ来ないんだ。 主任、今どこにいるんすか!!? 次号へ続く ~To Be Continued~     【編集後記】 自分のやるべきことを認識して、理解して、 たとえそれが嫌いな事でも、苦手な事でも、 真摯に向き合う、チャレンジする、やりきる。 一体どれだけの人ができる事でしょう? 今号は自分自身にそう問いながら執筆しました。 次号、蒼くんはダンボールのお城とどう向き合うのか? 主任は間に合うのか? 今号も最後までお読み下さりありがとうございました。 m(__;)m ライティング兼編集長:メリーゴーランド

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