70歳 新しい恋、始めます -後編-■アースダンボール メルマガVOL110■2021年5月号

~前号までのあらすじ~ 人生100年時代となった2051年の今年、 73歳になるばあちゃん(橘春子)の病院送迎の帰り、 たまたま一緒に寄った喫茶店のマスター、聖(ひじり)さんと、 ばあちゃんとじいちゃんの3人が実は幼馴染だったと知った。 そしてばあちゃんは18歳の時どちらと結婚するかで悩み、 悩むばあちゃんを見かねた当時のじいちゃんとマスターは、 "ダンボールサイコロで決めてくれ"と提案(決断)する。 ばあちゃんはその決断を受け入れてた・・・ マスターの前で、ばあちゃんは僕にそう話してくれた。 前号の全文はこちらです↓↓ https://www.bestcarton.com/profile/magazin/2021-apr-2.html (´o`)п(´o`)п(´o`)п *************************** ばあちゃんは話しを続けてくれた。 『そんな大事なことをダンボール箱で決めるなんて!!  そう思うわよね。  でもさっきも言ったようにそのダンボール箱は特別でね。  子供の頃の私達は何でもこのサイコロに決めて貰ってね。  とっても、とっても楽しかったわ。  この箱は子供の頃の私達3人の思い出が沁み込んだ箱。  いつも私達を繋げてくれていた存在。  不思議と、この箱が言うならって思うことができたの。  だから私には二人がどれだけ本気かすぐに理解できたし、  二人にそんな決断をさせてしまったのは、  いつまでも決める事ができないこの私・・・  だから私も二人の提案を受け入れる覚悟を決めたの。  奇数が出たら聖さんと、偶数なら橘と結婚すると』。 『でもその時、春子さんはこう言ったんですよ・・・』 と、マスターが口を開いた。 『"二人だけにそんな事をさせる訳にはいかない。  私も二人と同じリスクを負うから私にも2マス分けて。  その目が出れば、どちらとも結婚しない"・・・と。  春子さんも私達と同じ覚悟を共有してくれたんです』。 『でも不思議ね、同じ運命を受け入れようと決めたその時、  三人の心がまた一つになれた気がしたわ・・・  子供の頃、その箱の前でそうだったようにね』。 ばあちゃんが再び口を開いた。 『そして私達は自分の心をダンボール箱に託したの。  いや、そのダンボール箱は私達の心そのものだった。  だからこの箱が出す答えなら、後悔はない・・・って』。 ____________ ・・・・・・・・・ 僕はいつの間にかうつむいて聞いていた。 ダンボール箱に結婚の運命を託す・・・ それほどまでの事を何かに託す、覚悟を決める、 そんな経験の無い僕には全く想像もつかないほどの、 激しくて切ない、優しくて悲しい、そして強い心。 その時の三人の気持ちを想像しただけで、 僕は言葉を発することすらできなくなっていた。 (俺のばあちゃんって、すげえ人なんだな・・・)(´-`).。oO そう心でつぶやいた時、僕の頬に涙が伝った。 『それで、箱の答えに従ったんだね・・・』 『そうよ、お前のおじいちゃん、橘と結婚して、  お前のお父さんが産まれて、お前が産まれたの。  そしてお前は偶然にもここに連れて来てくれた。  ありがとうね、本当にありがとうね』。 僕の涙は止める事ができない程溢れていた。 (´o`)п(´o`)п(´o`)п *************************** 帰りの車中、ばあちゃんはいつもの雰囲気だった。 でも僕はほとんど黙ったままだった。 僕は気恥ずかしさを中和しようとカーラジオをつけた。 『さあ今日のメールテーマは  "恋に年齢は関係ある?ない? 再婚するなら何歳まで?"  でリスナーの皆様からのメールをお待ちしてますよ!  早速一通ご紹介しましょう~。  ラジオネーム 浪速の親分さん からのメールです。  "私の祖父は75歳で再婚しました。  祖母は20年前に病気で他界しましたが、亡くなる前に、  いい人が居たら再婚してね、と祖父に言っていたそうです。  そして祖父は実際にいい人との出会いがありました。  人生100年時代、まだまだ幸せでいて欲しいです"    なるほど~75歳!今は珍しい時代じゃないでよね~!  まだまだ皆さんからのメールをお待ちしてますよ~♪』 僕はミラーからそっとばあちゃんを覗き込んだ。 ばあちゃんは窓の外を眺めながら風にふかれて笑っていた。 その時、頭の中にぽんっと幸せな情景が浮かんだ。 更にその情景は瞬く間にどんどん膨らんでしまった。 『ねえばあちゃん、あのさ、もしいい人が居たらさ、  再婚とか、あり・・・?』 『なあに?突然・・・そうねえ~、  お前のおじいちゃんが15年前に亡くなった時も、  今のラジオみたいなこと言ってたわねえ。  もしいい人居たら、あの時みたいに悩むなよって』。 『そっか、じいちゃんそんな事言ってたんか・・・。  そう言えばさ、  聖さんの奥さんも何年も前に亡くなったって言ってたな。  ねえ、また一緒に行こうよ、聖さんの喫茶店にさ』。 『ええ??、うん、それはいいけど。  いいけど・・・  そうね、また、また連れてってちょうだい。  ところでお前、彼女は居ないのかい?  こうして送り迎えしてくれるのは嬉しいけど、  休日くらい彼女と出かけたりもしないとね~』。 『ご、ごもっともです・・・あはは~・・』o(‐д‐ヾ) ばあちゃんはまた窓の外に視線を戻した。 バックミラー越しに映るばあちゃんは優しく微笑んで、 気持ちよさそうに窓から入る風を感じているようだった。 その横顔にふと、若い頃のばあちゃんを垣間見た気がした。 FIN 98-2 (´o`)п(´o`)п(´o`)п ***************************     【編集後記】 段ボールサイコロで決めた、とそこだけ切り取ると、 "あり得ないでしょ~"と思いますよね。 でも"事実は小説よりも奇なり"という言葉もあります。 実はあなたの結婚や恋愛、それ以外の場面でも、 この3人以上の"あり得ない方法の決断"が あったりしたんじゃないですか・・・?('v`b) 少なくとも、時として心ではない物理的なものが、 心そのもの、魂そのものになるっていう感覚、 何となくわかる気がします。 それはダンボールだけじゃなくて、 あなたが扱っている、大事にしている商品やサービスも、 同じだと思うんです。 最後までお読み下さりありがとうございました。 m(__;)m 5月某日 ライティング兼編集長:メリーゴーランド

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