ごめんねダンボール・夏■アースダンボール通信8月号■2016年8月号

その幼い兄弟が我が家にやってきたのは、 私が小学校2年生の夏休みだった。 三日間だけ、というとても短い間だったけど、 その兄弟と過ごした三日間の最後の日は、 私が初めて何かに、"本気で必死"、になった日だったかもしれません。 その日、 私にはどうしてもダンボール箱が必要でした。 たった一箱だけのダンボール箱が必要でした。 それでは、どうぞ。 (´o`)п(´o`)п(´o`)п(´o`)п(´o`)п ************************************************ あれは、私が小学校2年生の夏休みだった。 私の家は、両親と6年生の姉、父方の祖父と祖母の6人家族。 両親は二人共、居住していた市の市役所の福祉課の職員だった。 きっと、"福祉課"という職場も、その兄弟が来た理由の一つだろう。 その兄弟は、様々な理由で親と暮らせない子供達の施設で暮らしていた。 その施設では、毎年夏休み中の三日間にホストファミリーを募集して、 施設の子供達のホームステイ的な行事を行っていた。 そしてその年、私の家にその兄弟がやってくることになった。 兄の"たける"が小学校3年生、弟の"ひかる"が1年生、 年齢的には、ちょうど私を挟んだ近い年頃の二人だった。 兄のたけるはとても弟思いで、弟の面倒をいつもよく見ていた。 弟のひかるは甘えん坊で、いつでも兄を頼っていた。 実際、私には兄弟がやってくる理由などはよくわからなかったが、 私達3人はすぐに仲良しになった。 6年生の私の姉は、3人とは一歩距離を置いていた感じだった。 (´o`)п(´o`)п(´o`)п(´o`)п(´o`)п ************************************************ 兄弟が私の家に来た時、弟のひかるは小さなダンボール箱を抱えていた。 かなり古びたダンボール箱で、穴や破れ、補修跡も沢山あったが、 ひかるは、その箱をとても、とても大事そうに抱えていた。 抱えていたというよりは、抱きしめていた、ような感じだった。 ダンボール箱の中身は、これもまた古びたおもちゃが数個。 ひかるは、昼も夜も可能な限りこの箱を自分の近くに置いて過ごし、 それがとても大事な箱だということが誰から見てもわかった。 時々、私の真新しいおもちゃにも興味は示したが、 "シメ"はいつでも、そのダンボール箱と、その中のおもちゃだった。 _________________ ただのお泊り行事とはいえ、小学校低学年の兄弟を招くのは、 私の両親もとても心配だっただろう。 目の離せない年齢の子供が二人増えたのだ。 無事に過ごし、やってきた兄弟に少しでも楽しんで欲しいと、 私の両親は、たけるとひかるにとても気を配っていたようだった。 しかし、そんな周囲の思いを、私は壊した。 (´o`)п(´o`)п(´o`)п(´o`)п(´o`)п ************************************************ 子供同士は、自然にケンカして、自然に仲直りする。 でも、いつもと少し違う要素が加わるだけで、自然でなくなる時もある。 3人が少し言い合うだけで、 理由がどうであれ、私の母親は、私ではなく兄弟の味方をした。 ケンカに発展しそうものなら、全て私がたしなめられた。 もちろん母親に悪気はなかった。そういう流れになってしまうのだろう。 『なんで?、、おかしいよ、、なんか変、、、??』 私は、少しづつ兄弟との時間がつまらくなっていった。 半日経ち、一日経ち、また半日が経ち、 時が経つにつれ、私の中の"変(へん)"は大きくなっていった。 二日目の夜には、夕飯も一緒に食べなかった。 その頃には、私の"変"は、"兄弟への嫌悪感"に変わっていた。 そして三日目。ステイの最終日。 3人はそれまでで一番大きなケンカをした。 といっても、私がそれをふっかけたようなものだった。 弟のひかるがわんわん泣き、それを聞きつけた私の母親が来た。 当然、私が怒られた。 私の母親は、泣いているひかるを抱きしめてあげた。 ・・・・・・・・・!! それを見た私の中の"何か"が、普段は超えない線を、超えてしまった。 (´o`)п(´o`)п(´o`)п(´o`)п(´o`)п ************************************************ 母親を別の誰かに取られる感覚・・・ 小学校低学年の男の子にとって、その意味は計り知れない。 線を越えた私の"何か"の矛先は、ひかるのダンボール箱に向けられた。 『ちっきしょおおおう!!』 私はひかるのダンボール箱を復元不能なまでに叩きのめした! 『なにをやってる!!! やめなさいいい!!!』 私の父親も出てきて、私は何度もビンタをくらった。 ひかるは段ボール箱を壊されたショックで、 私は母やらビンタやらのショックで、 二人とも家を飛び出してしまった。 (´o`)п(´o`)п(´o`)п(´o`)п(´o`)п ************************************************ そんなに遠くへは行かなかった二人は、ほどなく家に連れ戻された。 二人とも少しは落ち着いたが、口も利かず、うつむいたままだった。 楽しい夏の思い出には程遠い雰囲気だった、、、 私はまったく、これぽっちも反省などもできず、納得もできず、 いつしかふて寝してしまった。 少し経ち、うっすら目を覚ますと、隣の部屋から兄弟の話し声が聞こえてきた。 ひかるは、また泣いているようだった。 『うう、うわあん、箱、母ちゃんがくれた箱、壊れた、、、』 『泣くなよ、ひかる。箱なら他にもあるじゃないか』 『、、って、だって、があぢゃんが、ぐれだ、はご・・・』 『母ちゃんが、、、くれた、、箱・・・?』 私の頭が一瞬止まった。 さっきの、ひかるを抱きしめている母の姿を思い出した。 その箱は、ひかると、一緒に暮らせない母親をつないでいた箱だった。 その時、私の中で一旦線を超えた"何か"が、急速反転して舞い戻り、 いや、ぐるぐると回りだし、いや、ジグザグに、いや、クロスしながら・・・ 兄弟が家に来た意味や、二人の辛さや、母親へ想いや・・・ 私は子供ながらに、理解した。 母親をとられたという経験の直後だったから、理解できたのかもしれない。 例えば心理学の専門家なら、的確にその時の心を説明できるのでしょう。 でも大人になった今も、私はあの時の自分をうまく説明できません。 『ダンボール箱、僕が見つけなきゃ!』 私は決断した。 その箱は、何か青い印刷がしてあったので、 私は青い絵の描いた箱じゃなきゃダメだと思い込んだ。 手始めに自分の家のあらゆる場所を探したが、無い。 隣の家のおばちゃんに聞きに行ったが、やはり無かった。 その隣りも、またそのお隣さんも、青い印刷の箱は無かった。 その後、数件の家を回ったが、どこの家にもそれは無かった。 箱を探す決断直後の緊張、なかなか見つからない焦り、ひかるの泣き顔、、 『グス、、、ヒック、、、うう、、、ううう、、』 いつの間にか、私の目にも涙が溢れてきた・・・ それでも私は、真っ赤な顔で泣きながら、近所を一件一件回り続けた。 『ヒック、、グスッ、、、あの、あのね、 段ボールばご、ないでずが? ごのぐらいで、青い絵があるの・・・ヒック、、、』 行く家行く家で、号泣しながら箱を探す子供に、みんなびっくりしていた。 『ダンボル、バゴ・・ありばぜんが、、? だれんぢにも、無いの、、エグッ、、』 ボロッボロ、、に泣いて、言葉もはっきり出せなかった。 4~50件くらい回ったか、精神力も尽き、その場に座ってただ泣いていた私は、 探しに来た家族に連れ戻された。 (´o`)п(´o`)п(´o`)п(´o`)п(´o`)п ************************************************ 家に戻ると、ひかるが玄関先で待っていた。もう泣いてはいなかった。 ひかるの姿を見た途端、その日最大の涙と声が、体と心から噴火のように出てきた。 『うう、、ヒック、、ひ、ひがるうう~、、ごべんだざい、、ごべん、、、  はご、、あおいえのはご、、ながっだああ、、ごわじで、ごべんん、、』 私は、心の底から、底の底の、ずっと底から、ひかるに謝った。 ひかるにも、私の心は充分に伝わってくれていた。 しばらくすると、ご近所さんが2~3人揃って、私の家にやってきた。 『お宅のぼっちゃん、えらい形相で箱を探してたから。これ、使えるかしら?』 みんな、それぞれの家で青い印刷の箱を探して持ってきてくれたのだ。 ひかるはその中から一つ選んで、それを次の"宝箱"に決めた。 そして夕方、 一連の騒動でお昼ご飯を食べられずに腹ペコだったみんなで、 遅いお昼ご飯を食べた。  みんなに笑顔が戻った。 その夜、新しい箱を持って、たけるとひかるは施設に帰っていった。 たけるとひかるに会うことは、もうありませんでした。 最後に交わした言葉も、よく覚えていません。 でも夏の終わりが近づくたびに、あの兄弟を思い出します。 二人とも、どんな大人になったんだろう? 元気かな。 FIN (´o`)п(´o`)п(´o`)п(´o`)п(´o`)п **************************************************     【編集後記・へんしゅうこうき】 これは、私が小学校2年生の時の体験です。 ええと、、 編集後記、いりますか? なんか、いらない感じですね。 今、あなたの胸に湧いてきたかもしれない、その思い出を、 どうか大切にして下さいね。 最後までお付き合い下さり、ありがとうございました。 m(__;)m 8月某日 メルマガ編集長 やまぎし 一応仕事なので、すばらしい商品のご紹介! エアーバッグ型の緩衝材がオフィスの卓上でどんどんできる。 使えば得する緩衝材製造機、販売解禁↓↓ https://www.bestcarton.com/kansyo/cushioning/1242.html ┏┏┏┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ┏╋┏  株式会社アースダンボール ┏┏■  362-0811 埼玉県北足立郡伊奈町西小針7丁目17番地 ┏         TEL:048-728-9202 FAX:048-728-9130 ┃         mail:info@bestcarton.com ┃    http://www.bestcarton.jp/ (オーダーメイド) ┃    http://www.bestcarton.com/ (既 製 品) ┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■このメルマガへのご意見、ご要望、つぶやき、 応援メッセージなどは、このままご返信下さればOKです(。-_-。)ノ ■メルマガバックナンバーがWEBページになりました。 "過去号を全部見たい"という方はこちらのページへどうぞ↓↓ http://www.bestcarton.com/profile/magazin/#BackNumber ■アースダンボールのメルマガをお友達やお知り合いに紹介したい! という方は、こちらのアドレスを送ってあげて下さい。 ダンボールや箱を使わない方でも、どなたでも購読登録大歓迎です↓↓ http://www.bestcarton.com/profile/magazin/ ※メルマガ不要の場合は、こちらのURLから解除下さいませ。 https://plus.combz.jp/connectFromMail/leave/yapb8775

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