~見送りは胸の中で~■アースダンボールメルマガVOL216■2025年10月号

「今までありがとう、今から家を出ます」 お昼近く、今日から進学の為に家を出る息子からラインが届いた。 私はメッセージを確認してそっとスマホを戻した。 返事は送らないの?って言いたそうですね。 もちろん送りますよ。仕事が終わったらね。 それに貴方は他にも何か聞きたそうですね… じゃあ少し、その辺りをお話ししましょうか。 (´o`)п(´o`*)п(´o`*)п **************************** 今日は息子の新たな出発、門出の日。 そもそもそんな大事な日にあなたは見送りしないの? って思いますか? はい、しませんよ。だって仕事の日ですから。 休み?取りませんよ。 仕事の方が大事、とかそういう事じゃないんです。 これが我が家の、いや、私と息子の通常運転。 私は3年前に離婚して妻はこの家を出ていますが、 息子は私と暮らす事を決めました。 元妻も私もどちらでも構わないと言いましたが、 単に "学校へのアクセスがいい方" というだけの理由でした。 なので母親の見送りもありません。 そして一緒に暮らす娘(息子の姉)は仕事で早朝には家を出てるし、 保護猫のミケ子もきっとグースカと寝てる時間。 なので、息子は誰の見送りも無く出発したはずです。 そんな中で私にメッセージをくれた訳です。 こんな時くらい見送ってやれよ、 そう思われる方も沢山いらっしゃるでしょう。 むしろそう考える人の方が多いかもしれませんし、 誰の見送りも無く出発する気持ちを、私も一応は知っています。 ただ、息子もこういう状況は想定済だったろうし、 他人が思う程には何とも思っていないかもしれません。 まあ息子の胸の内なので本当の所はわかりませんが、 やっぱり親としての思いやりがないのかもと言われても、 否定はできませんね。 _________ 私は、子供の学校ごとにはほぼ出向きませんでした。 入学式や卒業式、授業参観、運動会、文化祭… 興味が無かった訳でも、単に嫌いだった訳でもありません。 学校は親の居ない社会であるべき、そう思っていました。 折角、親が居ない社会に居るのだから、 親がそこに居るという状況がそもそも不要なのでは? というような、やや偏屈(かもしれない)な考え方を持っていましたし、 先生方にお任せする場所、とも思っていました。 もちろん、必要があれば出向く事はやぶさかではありませんでした。 それに、行きたくても様々な理由で親が行けない、誰も行けない、 そんな状況の子供も沢山居ました。 それにこれは私の偏見なのかもしれませんが、 そんな子達ほど精神的にも人間的にも、 優しく強く成長しているように見えました。 ええ、私は教育の専門家ではありませんし社会学者でもありません。 完全な主観、完全な偏見です。 それに、私が休みを取って子供の姿を見に学校に行っている間に、 ライバル達はきっと頑張っている。負けるわけにはいかない。 負ければ子供達を、家族を守れない、負ける姿も見せたくない。 そんな想いもあった事は事実ですが、 そんな想いの自分に酔っていた事もまた事実だったと思います。 そんな父親でしたので、 子供達には寂しい想いをさせていたのかもしれませんが、 それでもどうにかこうにか、ここまで育てる事ができました。 そして私が思う以上に、彼らは "いい奴" に育ってくれました。 もし私がこの子らと同世代に生まれていたら、 "こいつと友達になりたい" と思える位にいい奴です。 だってこんな日、こんな時に、 「今までありがとう」って連絡をくれるんですよ。 いい奴に決まってます。 __________________ 仕事を終え、私は一言だけ 「体にはくれぐれも気を付けて、たまには帰って来いよ」 と返信してから家路につきました。 帰宅した私は "息子が家を出たという事実" 受け入れる為に、 息子の部屋に入りました。 いくらか物が少し残っているものの、整然と片付けられてがらんとしていました。 そして静かでした。とても静かでした。 そこでようやく "行ったんだな" と思う事が出来ました。 ふと見ると、部屋のど真ん中にダンボール箱が二つ積まれていました。 大きなダンボール箱の上に、小さなダンボール箱。 なんだ?と思い、持ってみると中身は空のダンボール箱でした。 引越し準備で余った箱か?にしても何でわざわざ部屋の真ん中に積む? おそらく意味は無いのでしょう。 私は部屋を出ようとしましたが、何故かふと気になり、 もう一度そのダンボール箱を見ました。 あ、そうか… その時、息子が小さかった頃、一緒に動物園に行った思い出が蘇りました。 二つに積まれたダンボール箱が、 肩車してキリンを見ていたあの日の私と息子に、見えた気がしました。 大きなダンボール箱が私で、小さいダンボール箱が息子。 なあ、こんなお父さんだけど、 お前が本当に必要な時は、俺が必ず側に居てやるからな。 FIN 98-2 (´o`)п(´o`*)п(´o`*)п ****************************     あ と が き あなたには、 見送った経験、見送られた経験、ありますか? そこにはどんな思い出がありますか? 見送れた、見送られたから悔いが残らなかった。 見送れなかった、見送られなかったから悔いが残った。 そんな経験があった人もいらっしゃるかもしれませんね。 それでもやっぱり、 どうしても見送れない、どうしても見送られない、 そんな時もありますよね。 だからこそでしょうか。 今が大事。何気ない今が大事。 と思えてくるのは。 今号も最後までお読み下さりありがとうございました。 m(__;)m ライティング兼編集長:メリーゴーランド

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