オタクです、それがなにか!?■アースダンボールメルマガVOL205■2025年4月号-2
ダンボール箱って邪魔なのよ!!
あの時ばかりはハッキリそう思ったわ。
ダンボール箱は本当は便利な物よ、めっちゃ便利。
99.99%は便利。それはわかってるんだけど、
0.01%の時はやっぱり邪魔なのよ!
それはどんな時か言えって?
仕方ないわね、じゃあ教えてあげましょうか…
(´o`)п(´o`*)п(´o`*)п
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「うわああ~ムリいい~」(゚д゚;)
お見合い写真の彼を見た時の私の正直な第一印象だった。
見るからにオタク、いや絶対に筋金入りのオタク!
お見合い写真なのにちょっとよれたスーツ、少しボサっとした髪、
牛乳瓶の底みたいな度の強そうなまんまるメガネ…が似合い過ぎ!
個性的、と言う人も居るかもだけど、多分私は無理…
でもすごくお世話になってる人からの達て(たって)の頼みだし、
お見合い自体は断る事が出来ない…ならどのタイミングでどう断るか!?
私の頭はそんな考えでいっぱいになっていた。
そして迎えたお見合い当日。
実際の彼は写真のイメージのまんま、いやそれ以上!!
私の笑顔は引きつっていたに違いない。
しかもこの人殆どしゃべらない!!一体何しに来たん!?
そんなギクシャクしまくりの私達を放置するかのように、
「じゃあ後は若い者同士で」とサッサと立ち去る世話人達。
そんな中、彼がやっと話し出した。
「本日はわざわざすみません。
ちゃんと先に申し上げておきたいのですが、このお話に私は分不相応です。
とてもお世話になっている人の頼みなのでこの席に来ましたが、
私の写真を見たはずなのできっと貴方もそうなのだと思います。
立場的に私が貴方に断られるのが自然です。そのような流れにしましょう」
そう話す彼を少し意外に思った。話の内容も意外だったがそれ以上に、
話し方が綺麗で言葉も丁寧、知的な感じさえする。
ただ自分に対する自信の無さだけはハッキリとわかった。
その上で私に気を使い、自分が気に入られなかった事にしようと言っている。
建前こそ同じ気持ちでこの席に臨んだ私達だったが、
相手がどうあれただ断る事だけを考えていた自分が少し恥ずかしくなった。
そして私のそんなお詫びの気持ちだったのだろうか?
それとも私の只の興味本位の気持ちだったのか?
私は彼に「まだお互いの何も知らないのに、ですか?」と返した。
彼は一瞬だけ意外そうな顔をし、でもすぐに落ち着いた表情に戻り、
「だって、僕はこんな容姿ですから」と静かに言い返してきた。
やっぱりそうだ、多分この人は知性的で理性的な人だ…
このお見合いをどう終わらせるかの作戦会議をするどころか、
それから私達は互いのこれまでの人生を話した。
彼は自分の容姿にとても強いコンプレックスを持っていた。
オタクという事も事実で今まで女性と付き合った事が無い。
でもとても誠実で実直で、凄く頭もいい。社会人としても立派だ。
いつしか私の中に "もったいない" という言葉が浮かんでいた。
そして話し終える頃にはこの席に着く前の私ではなくなっていた。
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まずは友達からという形ではあったが、お見合いをそう締めくくる事にした。
確かに友達としてなら申し分ない人だと思えた。
それからはたまに食事に行ったりするくらいだったが、
会う度に少しづつ、自分でも気づかないくらい本当に少しづつ、
彼のいい所もダメなところも受け入れ始めた自分が居るようだった。
そしてあのお見合いの席で感じた知性的で理性的、誠実で実直な人格。
それはより確固なものになっていった。
今思えば、彼に魅かれ始めていたという事なんだろう。
互いに実家暮らしだった私達はお互いの家にも行き来するようになり、
まだ友達のままだったが、友達よりもほんのちょっと上かも、
そんな雰囲気が出始めた頃、私には同時に心配事もあった。
私の友達がどうにも彼を認めたくないらしかったのだ。
友人達に会う度に、"あの人はどうした?何か騙されてないか?"
と問い詰めるように質問してきて、二言目には、
"絶対やめなよ!!やめときなよ!!" っと言う始末。
友人達には彼の写真しか見せた事しかない、彼と会った友人も居ない。
というか友人達が彼に会いたがらないからそれも仕方がない。
かといって友人達も一応?私を心配?してくれてる?
のだとは思うんだけど、私はとてもモヤモヤしていた。
彼に会ってちゃんと話せば彼がどんな人かわかるはずなのに。
何度もそう言ってるのに…
外見だけで人を見極めたつもりになっている友人達が少し腹立たしくもあった。
ただ実際に会うまでの自分も同じだった事を思い出し、何も言えずにいた。
そんなある日の事だった。
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私は自宅からすぐそばの集会所に荷物を運ぶため、
ダンボール箱を2箱用意し、そのうち一箱を彼に手伝って貰った。
二人でダンボール箱を抱えて歩いていると私の友人二人に出くわした。
「あ、優菜!郁美!これすぐ運び終わるからこの後一緒にお茶しない?」
私がそう言うや否や二人はそれを無視して彼に話しかけた。
話掛けたというより、どこか尋問に近かった。
「ねえあなた、この子の事どう思ってるの?」
「ちょ!優菜、初めて会うのにその言い方!!」
私は優菜の物言いに割って入った。
「いいの、あんたは黙ってて。で、どうなの?」
「どうって…いい友達だと思ってますよ」
「いい友達って、本当にそれだけ?」
「はい、それだけですよ」
彼は丁寧に、優しく微笑んでそう答えた。
「でもさあ、あなたさあ、友達って言ってもさあ」
郁美がそう言いかけた時、私の中の何かが "プチッ" と切れる音がした。
「ちょっと二人ともいい加減にして!!
これ以上彼に失礼な事言うなら私本気で怒るよ!!」
今まで友人達の前で声を荒げた事のない私が感情のままにそう言い放った。
「さ、行こう、」
私が二人にわき目もふらずに歩き出すと、彼はすぐに私を制した。
「ねえ、ちょっと待って、いいの?このままで」
「いいの!あの子達すっごい失礼!私本気で怒った!」
「二人とも君を心配してるからだよ」
「心配、はそうかもだけど、でもだからって」
「大切な友達なんでしょう?このままじゃダメだよ」
「は~…あなたこんな時でも私と友達の心配?あなたは腹立たないの?」
私の感情はまだ収まらなかった。
「…立たない、立たないよ全然…だから僕の事で友達と喧嘩しないで欲しい」
彼にそう言われた時だった。
湧きたった感情がすうーっと落ち着いてきた。
そう、多分この時だ、私の心がハッキリと決まったのは…
これから先、私がどんな時でも、
彼の言葉はきっと私をこうやって癒してくれるんだ、きっとそう…
私はふと立ち止まり、抱えていたダンボール箱を地面に置いた。
「急にどうしたの?ダンボール箱、底が汚れちゃうよ。
そうか、今から二人の所に戻るんだね?うん、まだ間に合うよ。
僕はここで待ってるから早く行って」
「うん、行く。でもその前にする事があるの」
「すること?」
「うん、だからあなたもダンボール箱を置いてちょうだい」
「どうして?」
「いいから早く置いて!」
「だからどうして?ちゃんと説明してよ」
「は?説明!?させるの?私にさせるの?その説明を!?
わかったわよ、するわよ、説明。いい?よく聞いてね。
あなたがこのダンボール箱を抱えてたらね、
あなたにハグできないでしょ!!!!
だからね、そのダンボール箱が邪魔だって言ってるの!!
伝わったかしら!?説明になったかしら!?
それともなにかしら?私よりそのダンボール箱を抱えてたいわけ!?」
「・・・・」
「地面に置きたくないなら今回は背中からでも可とするわ。し、初回だし…」
「…じゃあ、せ、背中からで…初回だし…」
私は彼の背中からそっと彼を囲うように両手を回した。
そして私の両手の指先は彼が抱えているダンボール箱に触れ、そこで止まった。
「ねえ、やっぱり置いてくれない?ダンボール箱」
FIN
(´o`)п(´o`*)п(´o`*)п
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あ と が き
本当にふと思っただけなんですけど、
自分の容姿に自信を持ってる人って、
全体の何割くらいの人なんでしょうか?
因みに私はその何割かの人ではありません。
でもちょっと不思議と、
例えばすごく気分がノッてる時や物事がうまく回ってる時とか、
要するに心が充実しまくって自信に溢れてる瞬間にふと、
"俺ってかっこいいかも" とかよぎる事があります、正直に言うと。
貴方にはありませんか?
"今の俺、カッコいいかも" とか
"今の私、もしかして可愛い?" とか。
今号も最後までお読み下さりありがとうございました。
m(__;)m
ライティング兼編集長:メリーゴーランド

