ヤンキー少女のガッキーさん■アースダンボールメルマガVOL209■2025年6月号-2

僕は初めての魅力に目を奪われてしまった… ダンボール箱を抱えて立ち上がるヤンキー少女。 彼女の行動が僕にその感情を抱かせた。 「おい、なにジロジロ見てんだよ!」 「あ、すみません、別に…」 「ったく、変な目で見てっと警察呼ぶぞコラあ!」 口は普通にヤンキーっぽいんだよな~ ただやってる事はめっちゃあったかいんだよな~ (´o`)п(´o`*)п(´o`*)п **************************** 僕はとある会社のサラリーマン、29歳。 転勤でこの街にやって来たばかりだ。 それはこっちに来て一週間ほどしたある夜の事だった。 普段、殆んど自炊をしない僕は、 夕飯を買いに近所のコンビニに初めて行ってみる事にした。 そしてコンビニに着くなり俺はその光景を目にして固まった。 「うわ…ヤンキー…」 ヤンキー。 そう呼ぶしかない風貌の少女達が5人、店の前で屯(たむろ)していた。 高校生くらいか?もう少し上か?どこの町にもいるんだな… 彼女らが居るのは出入り口の真ん前、ではないけど微妙に出入り口に近い場所。 チキンな俺には、なんっっっとなく入りにくい。 スマホを見るふりをして店には入らずに彼女らが帰るのを少し待った。 が、一向に帰る様子はない。まあそうだろうな… それぞれ用事があったらこんなとこでダラダラしてないか。 すると一人の老人男性がヨタヨタとやって来て、 彼女達の前を通り過ぎ、店に入ろうとした。 「おい、爺さん、買い物かよ」 「ええ、そうですよ」 恐らく彼女らのリーダーと思(おぼ)しき少女がその老人に声をかけ、 老人は彼女の問いかけにゆっくりとした口調で答えた。 ああヤバイ、爺さんがヤンキーに絡まれてる… しかし僕は何もせず離れて見て見ぬふりをしていた。 「何買うんだよ?」 「夕飯を買いにね、私と妻の分をね」 「ふううん、爺さん一人で大丈夫かよ」 「何を買えばいいかわからない時も多くてね」 「そっか…じゃあ一緒に選んでやんよ、奥さんは何が好きなんだ?」 「妻は、、、パスタが好きですねえ」 「そうか、パスタなら山ほど種類あんぜ」 そう言って彼女は老人と一緒に店に入った。 このやり取りは、なんだ…? ちょっと違和感があり、頭が追いつかなかった。 すると店外に居る他の4人の会話が聞こえた。 「ねえ、ガッキーのやつ、あの爺さんと何してんの?」 リーダー少女はガッキーというらしい。 「知んねえ」 「うち、あの爺さん知ってるよ」 「うちも!でも奥さん何年も前にとっくに亡くなっててさ、  最近ちょっと、ほら、あれらしいじゃん」 「ガッキーもその事知ってるよね?」 「知ってるはずだけど…」 なるほど、人物の背景もわかったがやはりまだ繋がらない… ガッキーさんはどういう意図で何をしているんだ? そうこうしていると店の中から二人が出てきた。 なにやらガッキーさんも袋を重そうに持っている。 「爺さん、奥さんが炭酸好きだからってこんなに沢山買ってどうすんだよ」 「色々選べる方が喜ぶだろうと思ってねえ」 「こんなに重いの持って帰れるのかよ」 「ああ大丈夫、だいじょお、…ちょっと重いなあ」 「は~!ったくしゃあねえな!家まで運んでやるよ」 そう言ってガッキーさんは袋を持ったまま歩き出した。 「ねえガッキー、あんた何やってんの~?」 「うっせえ!先に帰ってろ!」 「そんな爺さんの家行って大丈夫かよ」 「だからうっせえっての!どうにもなんねえよ、バカ!」 やっぱり口は普通にヤンキーっぽいんだよな~ ただやってる事は普通のヤンキーっぽく無いような… 二人が角を曲がって見えなくなったタイミングで僕は店に入った。 初めての店だし、品揃えチェックやら立ち読みやら少し長居して、 買い物を済ませて店の外に出ると、 ガッキーさんの取り巻き少女達はまだ同じ場所でガッキーさんを待っていた。 しかも今気が付いたが地面にどっしり座ってらっしゃる。 するとガッキーさんが1箱のダンボール箱を抱えて帰ってきた。 「ガッキー、そのダンボールなあに?」 「みかん。お前らにもやるよ」 「なんでみかん?しかも箱で?」 「なあんか爺さんがさ、"妻と二人じゃ食べきれんから"って」 「確かに爺さん"ひとり"じゃ食べきれんわな」 「つうわけで貰ってきてやった、ほら、食えよ」 そう言いながら彼女達はガッキーさんが抱えるダンボール箱に手を伸ばし、 もしゃもしゃとみかんを食べ始めた。 「ねえ、奥さん用に買ったパスタとか、どうすんだろうね?」 「わっかんねえ、明日とかヘルパーさんとかがどうかすんじゃねえの?」 「そうだよねえ、あたしが食べてやってもいいんだけど」 「じゃあ爺さん家に行って来いよ」 「いやそれは遠慮しとくわ」 彼女達は奥さん用のパスタの行方を心配しながら、 しばらく黙りこくってみかんを黙々と食べ続けた。 「こんだけあると全然減らねえな、持って帰るか、しょっと!」 そう発声したガッキーさんがダンボール箱を持ってスッと立ち上がった時、 僕は一瞬ドキっとした(〃▽〃) 華奢(きゃしゃ)な体格のしなやかな腕で、しっかり優しくダンボールを抱える姿が、 なんていうか、カッコ良くて、どこか妖艶で、 上着の背中のベティ・ブープの刺繍もめっちゃエモくって。 本当はすごく優しい子なんだな、ガッキーさん。 もう外は真っ暗な田舎のコンビニ。 店内と電飾看板から発する強く眩(まばゆ)い光は、 ステージ照明のようにガッキーさんの背中を照らしていた。 気が付くと、いや気が付かずに僕はガッキーさんをじーっと見つめてしまっていた。 僕は初めての魅力に目を奪われてしまった… ダンボール箱を抱えて立ち上がるヤンキー少女… 彼女の行動が僕にその感情を抱かせた。 「おい、なにジロジロ見てんだよ!」 「あ、すみません、別に…」 「ったく、変な目で見てっと警察呼ぶぞコラあ!」 やっぱり口は見た目通りなんだよなあ~ でもやってる事はめっちゃあったかいんだよな~ っていうか見た目通りっていうのは僕の偏見だったな~ ごめんなさい、ガッキーさん。 そう心で呟いて帰ろうとした時、 「あ、そうだお兄さん、これあげる」 そう言ってダンボール箱からみかんを3個掴んで、 俺の手のひらに置いてくれた。 "この街に来て良かったかもしんない" 俺は少しウキウキしながら家に帰った。 FIN 98-2 (´o`)п(´o`*)п(´o`*)п ****************************     あ と が き 初めて会う人を見た目で判断してしまう事は、 殆どの人に経験が有りますよね。 その人がまだどんな人かわからない時、 その人をどう捉えればいいか? そんな時は… もしその人がダンボール箱を扱う時が有ったら、 そうそうタイミングよく無いとは思いますがもしあれば、 ダンボール箱を扱うその人を観察してみて下さい。 ダンボール箱の扱いってね、意外と人が出るんですよ。 私調べ、ですけどね。 今号も最後までお読み下さりありがとうございました。 m(__;)m 6月某日 ライティング兼編集長:メリーゴーランド

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