ほら、素直になんなよ■アースダンボールメルマガVOL211■2025年7月号-2

人は素敵な物の前では無力化するんだよ。 素敵な物に出会ってしまうとね、 見て見ぬふりして仕舞い込んでた感情が、不意に表に出ちまってあたふたしたり、 何故かずっと素直になれなかったのに、急に素直になった自分に気付いて、 こっぱずかしさがこみ上げて来たり。 まさに制御不能、自由落下、諦めて身を任せるしかない。 でも案外、そんな状態も心地よかったりするんだよな。 (´o`)п(´o`*)п(´o`*)п **************************** 俺は角田誠実(かどたまさみ)23歳の大学三年生。 実家暮らしの大学生ってやっぱりどこか気楽だし、 モラトリアムの中に居る自覚は一応ある。 親は従業員30人程の会社を経営してて業績もそこそこだ。 だからこその今の暮らしが有るってのもわかってる。 でも俺は昔から親の仕事に全く興味が持てなかった。 俺は継がない、別の道を歩むんだと何故かそう思っていた。 それになんと言ってもあれだ、俺の名前、 "せいじつ" って書いて "まさみ" って。 全然誠実じゃないしむしろ逆だし、俺には過ぎる名前だ。 とは言えもう大学三年生。 家業を継ぐか否か、ハッキリと答えを出さなきゃならない。 そんな中、流行り風邪で外回りの従業員が欠勤してしまい、 どうしても手伝って欲しいと親父に頼まれた。 たまにしかない事だし、それを断る程俺だって野暮じゃない。 それにこう見えても仕事の知識だってある程度は持っている。 一応、職場の作業用ブルゾンを着て社用車で客先に向かった。 ________ 代打とは言え、しっかりとやるつもりだ。でもやっぱりどこか気が乗らない。 そんな気持ちを覆うようにカーステレオを大音量で鳴らして車を走らせた。 すると前を走る車が左にウィンカーを出し、減速しながら車を路肩に寄せ始めた。 "おいおい、こんな所で止まるなよ、ったく!" その車が完全に止まり切らないうちに俺は右側から追い越そうとしたが、 対向車線の数台の車も同じように左に寄せて始めていた。 "ん?…" カーステレオのボリュームを下げて初めて後ろを走る救急車に気付いた。 少し焦りながら前の車に続いて左に寄せ、救急車は無事に走り去った。 "今のは、ちょっとまずかったか…" 胸が少しチクッとなった。 ボリュームは下げたまま、さっきまでと同じ車の後ろを俺は再び走り始めた。 そもそもあのボリュームで客先に着くのだってまずいし、 商売やってればいつ誰がどこで見てるかもわからん。 しばらくすると、前の車が今度はウィンカーを出さずに減速し始めた。 "今度は何だ?" と思うと同時に俺はある事に気付いた。 "そう言えば俺、信号のない横断歩道ってどうしてたっけ…  横断歩行者が居てもいつも止まっていないな" 横断歩道に居た親子が手を繋いで、子供はもう片方の手を上に挙げながら、 母親は止まった車に深々と頭を下げて、笑顔で安全に渡った。 安全に渡った親子を見て俺は胸がまたチクッとなった。 俺、運転中に人のこんな笑顔見たことあったか?いや無い。 っていうかそれ以前に、俺ってもしかして… 人に迷惑はかけてないけど、迷惑かけるスレスレの線を生きてるのか。 多分、このまま行くと実際に迷惑をかけちまうかもしれない。 今は人の好意に助けられているだけなのか…? あ、違うわ、それ以前に道交法違反だわ。 短い時間で前を走る同じ車に2度も自分の現実を見せられた俺は、 ふと前の車の搭乗者が気になった。 後部座席には多分、チャイルドシートが装着されていて、 その隣には女性がチャイルドシートに向かって手を叩いている。 母親が子供に歌を歌っている、のかな? とすると運転手は父親、ご主人か。 幸せそうな家族の姿を見て、今の自分との差を余計に強く感じた。 運転一つでもこんなに違うんだよな… するとその車がホームセンターの駐車場に入ろうとウィンカーを出した。 自分も客先の帰りに寄ろうと思っていた場所なので、追従して駐車場に入った。 降車したその家族をちらっと見ると、やっぱり幸せそうな家族だった。 うん、本当にいい家族だな。 俺はその家族をよそ眼に梱包資材コーナーに向かった。 すると少し遅れてその家族も同じ場所にやって来た。 俺はちょっと気が引けながらもその家族の会話に聞き耳を立てた。 「う~ん、どれがいいのかな~?」 「これなんてどう?ちょっと弱いかな?わかんないわね」 ダンボール箱を選ぶのにちょっと迷っているらしい。 すると…ご主人が突然、なぜか俺に声をかけてきた。 「あの、ちょっと聞いていいですか?」 「え?あ、自分、ですか?」 「はい、そうです。店員さんですよね?」 「あ、違います、自分は店員じゃなくて…」 「そうだったんですか、すみません、てっきり店員さんかと」 どうやら俺が着ている作業ブルゾンで店員に見えたらしい。 「あ、でも俺、あいや自分ダンボール詳しいんで良かったら教えましょうか?」 「そうなんですか?ありがたいです!実は…」 聞けば、ご主人が長期の海外出張で荷物をその国に送りたいとの事だった。 「なるほど、なら最低でもこの強さが理想っていう材質があるんですけど、  ここにはその材質の箱が無いみたいですね。あと国によってはサイズも注意です」 「そうなんですか、じゃあダンボールの専門店の方がいいですかね」 「そうですね、それでもいいですし、もし良かったらなんですが、  うち、梱包発送代行業やってて、海外発送用の箱も何種類か常備してまして」 「そうなんですか!?場所はどちらですか?」 「ここからすぐ近くです」 「でしたら、お邪魔してもいいですか?」 「勿論です。自分、これから一件だけお客様に訪問があって、  その後で良ければ自分がご案内しますよ」 (えっと、なんだ?この流れ。いんだよな、別にいいんだよな?) するとご主人の横で話を聞いていた奥さんが 「あなた良かったわねえ、偶然プロの方にお会いできるなんて!」 と笑顔で話に入ってきた。なんか赤ちゃんも笑ってるし。 「本当にありがとうございます。どうすれば良いか全然わからなくて。  おかげで安心して荷物を送れます」 というご主人の言葉に、俺はさっきまでの車の出来事を思い出しながら、 (いえいえ、お礼を言いたのはコチラなんでけどね) とはさすがに言わなかったが、 親父とお袋が守ってる会社を、俺は少し誇らしく感じた。 FIN 98-2 (´o`)п(´o`*)п(´o`*)п ****************************     あ と が き 日々の何気ない生活の中で、 "今のはまずかったかな?" と思ったりとか、もう少し進んで、 "これは気を付けろって何かのお告げか?" などと感じたりする事ってあったりしませんか? 最近思うのですが、それらの気づきやらお告げやら、 内容が大事な場合も勿論ありますが、 まずはそれを受信できて良かったなあ、と思うのです。 気にし過ぎは良くないとしても、 "知らぬが仏" だけで居たくはないとも思います。 貴方の受信感度は良好ですか? 今号も最後までお読み下さりありがとうございました。 m(__;)m ライティング兼編集長:メリーゴーランド

次のメルマガへ: 

バックナンバー一覧に戻る

ダンボール専門店最大4700種類超え・ご注文累計100万件以上 創業72年 工場直営なので最短当日お引き取りも可能 ダンボール2.0

  1. ダンボール通販・購入 トップ
  2. 箱職人のメールマガジン
  3. 2025年7月号-2 ほら、素直になんなよ■アースダンボールメルマガVOL211■