高校潜入捜査官 ~真子の日常~■アースダンボールメルマガVOL213■2025年8月号-2
やばい!!見られた!!
もう終わりだ…さよなら俺のスマホ…
遂に先生に見つかった俺のスマホ、校則違反だ。
きっと没収されて解約させられる。
俺は覚悟した。
(´o`)п(´o`*)п(´o`*)п
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俺は笹嶺奏太(ささみねかなた)、男子高校生。
今どきの高校生って、みんな学校ではどんな風にスマホ使ってんの?
授業中にスマホをいじるなんてのは校則違反以前の問題だろうけど、
学校に持ってくるのはOKってとこが多いのか?
因みにうちの高校は "学校内スマホ所持禁止"
つまり持って来ちゃダメ!!って決まりだ。
更に髪型やら服装やら、他にもなんやかんやと、
ここまでやるか!?ってぐらい厳しい校則で有名だ。
でもほとんどの生徒は内緒でスマホ持ってきてるし、学校側もそんな事は承知だ。
それに生徒側だって持ち物検査の対策は万全だ。
でもなぜか!?摘発されてしまう生徒が多い…
所持NG=校内使用発覚=現行犯。
そして "見せしめ" でスマホ解約までさせられた生徒も多数だ。
そんな状況の学校側と生徒側の攻防戦。
摘発された生徒だって充分に警戒していたはずだ。
なのになぜ!?
それもこれも全部、あの先生が赴任してきてからだ。
新庄真子(しんじょうまこ)、27歳、英語科教師、独身。
小さくて可愛らしい雰囲気の先生で、
皆から「まこちゃん」とか「まこちゃん先生」と呼ばれる人気者だ。
特に男子生徒からは毎日絡まれるし、数名のマジ告白報告もある。
でも普段から人とは最低限の会話しかしないし表情も殆ど変えない。
何を考えているか全然わからない人だが、
ある意味そのミステリアスさも人気の秘密だ。
でもそんなまこちゃん先生には裏の愛称がある。
"鉄の女" "野生の嗅覚" "校則違反ハンター" "スマホ狩りのまこ"
そう、スマホ持ち込み違反の現行犯急増の裏には、
"英語科教師、兼、生活指導担当まこちゃん" の存在があった。
まこちゃん先生のスマホ違反への嗅覚は異常な程に鋭く、
どれだけ用心していても使用中の現場に気配もなく突然現れる。
しかもさりげなく、スマートに、いかにも自然な流れで。
それはさながら映画の中でしか観た事が無い、
CIA(シーアイエー)のエージェント。
そして見つかれば最後…
必ず没収され、最悪の場合は解約に追い込まれる…
容赦は一切ない。"鉄の女" たる所以(ゆえん)だ。
ゆえに安心してスマホを使用できる場所は男子トイレのみ。
同じ事を考える男子生徒でいつも男子トイレ個室は満室という異常事態。
それでも摘発の手は緩まるどころか増々強化され、
いつも校内には妙な緊張感が漂っていた。
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そんなある日の事だった。
友達も少なく、普段からぼっちで過ごす俺は、
特に学校にスマホを持ってこなくても不便の無い生活をしていた。
でも母が入院し、その関係で父や妹と日中に連絡を取り合う事が増え、
仕方なくスマホを学校に持って来るようになった。
勿論、数少ない友人の力を借りて出来る限りの情報を集め、
まこちゃん先生対策に万全を喫した。
噂通り、本当にまこちゃん先生さえやり過ごせば後は楽勝だった。
しかしスマホを持って来るようになって何事もなく過ぎた数日後、
それは起きた…
放課後、下校でもうすぐ校門を出ようという時だった。
スマホの着信バイブレーションに気付いた俺は、
母に何かあったのかも!?と焦ってその場でスマホを出した。
そしてメッセージの内容を確認している時、ふと背後から声がした。
「笹嶺くん…」
振り向くと、目の前に大きなダンボール箱が宙に浮いていた!!
「うおおおっ!!」
と一瞬驚いたがよく見ると、
正面から顔も見えない程大きなダンボール箱を抱えたまこちゃんだった。
「まこ…新庄先生…!!」
しまった!!焦って気配に気づかず背後を取られた…
あれだけ用心してたのに、くそっ!
これが全校生徒が恐れるまこちゃん先生の実力か、ちくしょうっ!!
「笹嶺くん、何やってるの?」
「あの~、これはその…」
「あの~、じゃないのよ、ほら、早く、」
「はい、わかりました、どうぞ…」
俺はスマホを先生に差し出した。
「何やってるのよ、そうじゃないわよ」
「そうじゃない?ってどういう…??」
「だから早くメッセージ送信しちゃいなさいっての」
「え!?」
「え!?じゃなくて早くしてよ、重いんだからこの箱」
「あ、え? はい、じゃあ…」
「このダンボール箱でちょうど他の生徒から見えないでしょ、ほら、今のうちに」
僕はまこちゃんに言われるがままメッセージを送信した。
なるほど、スマホを没収する前の最後の情けか…
処刑前の「最後に何か言い残す事は無いか?」的なあれか…
鉄の女の情け、武士の情け、そうか…
ひとまずメッセージは送信できた。
母に何かあった訳ではなかった事もあって少しほっとした。
「はい、送信できました、じゃあ、どうぞ」
「どうぞって、そんなに没収されたいの?」
「されたくは、ないですけど…」
「笹嶺くん、色々あるんでしょ?知ってるわ」
「え? あ、さすがはCIA…」
「CIA?」
「いやなんでもないです」
「それにしても笹嶺くん、さっきの貴方、隙だらけだったわよ」
「あの、めっちゃ焦っちゃって」
「もうちょっと上手くやりなさい、あとちょっとで校門の外なんだし」
「わかりました。ってか先生、没収しないんですか?」
「する訳ないじゃない」
「なん、で?」
「私を何だと思ってるの?
手あたり次第取り上げてお仕置きしてるとでも思ってたの?
冗談じゃないわ。私が没収するのはね、
なんの感謝も無くて人に対する思いやりも無くて、
なんの力も信念も無いくせに親のすねだけかじって、
自分が一番偉い~なんて勘違いしてる悪ガキからしか取り上げないわ。
ストレス解消も兼ねてね」
「スト…」
「なに?」
「あいや、意外だな、と」
「意外? まあいいわ、それより何か言う事はないの?」
「あ、すみませんでした。あと、ありがとうございます」
「バカねエ、そんなんじゃないわよ、勿論それもだけど」
「そうじゃない?ってじゃあ何ですか?」
「こんなに小さくか弱い女性にこんな大きなダンボール箱ずっと持たせとく気?」
「あ!すみません、俺が持ちます!って軽っ!中身空じゃないすか!?」
「そう?私には重いのよ、ダンボール箱って意外に重いのよ」
そう言って先生と並んで歩きながら、
俺はダンボール箱を職員室に運んだ。
そして職員室を出ようとした俺は、ふと気になって先生に聞いてみた。
「そう言えば先生、あんなとこでダンボール箱持って何してたんですか?」
「さて、なんでだったかしら?忘れたちゃったわ」
「忘れたって…」
「忘れたものは忘れたのよ、そんな事どうでもいいじゃない」
と先生は言っていたが。
いや、マジでダンボール持ってあそこで何してたんだ?
まさか…俺を…たす…!?
いやまさかね。
FIN
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あ と が き
先生の想い出、ありますか?
好きだった先生、嫌いだった先生、
親身になってくれた先生、よく叱られた先生。
今しみじみと思い出している人もいらっしゃるかもしれませんし、
実は私、先生です!という人もいらっしゃいますよね。
私は教育者ではないし、教育方面の知識もありませんので、
良い先生の条件、みたいなものはわかりませんが、
私にとって良い先生は、
"自分の事をちゃんと見てくれていた先生"
です。
あなたにとって良い先生とは?
今号も最後までお読み下さりありがとうございました。
m(__;)m
ライティング兼編集長:メリーゴーランド
