真夏の一夜にハイブリッドな幽霊と -後編-■アースダンボールメルマガVOL163■2023年7月号-2

『だって私、幽霊だよ・・・』 確かに目の前の女の子はそう言った。 その"自称幽霊" の女の子がもう3年もこの場所に居続けてるという理由を、 彼女の"心残りのダンボール箱"の話を聞こうとしているところだ。 (´o`)п(´o`*)п(´o`*)п **************************** ~前号までのあらすじ~ 俺は郡司倫太郎(ぐんじりんたろう)、高校三年生、彼女なし。 夏休みで親父の友人が経営する海の家に住込みバイトに来ていたある夜、 寝付けなかった俺はフラッと夜の散歩に出かけた途中で、 砂浜に一人佇む"渚(なぎさ)"と名乗る女の子と出会った。 彼女は自分を "幽霊だ" と言い、もう3年もずっとこの場所に居るという。 そしてその理由は "心残りのダンボール箱" があるからだという・・・ 彼女の "自称幽霊" の是非はとりあえず横に置く事にして、 『私と少しお話しない?』という彼女の誘いを受け入れ、 俺は彼女の "心残り" の理由を聞く事にした。 (前号までの全文はこちら↓↓) https://www.bestcarton.com/profile/magazin/2023-jul-1.html (´o`)п(´o`*)п(´o`*)п **************************** 『それで心残りのダンボール箱って?』 『うん、あれは3年前の夏祭りの日でね・・・  夏祭りでは子供達が御神輿を担いで街中やこの海岸を練り歩くの。  あの年のお祭りで私の友達の美波(みなみ)が御神輿の手伝いをしててね、  お祭りが終わったその日の夕方頃、美波から私にラインが来たの。  "海岸にダンボールのカラ箱を1箱だけ置き忘れた、ごめん片して!"って。  私の家は海岸のすぐ近くだから、私に頼んできたのよ。  その時、美波がダンボール箱を置き忘れた場所がほら、すぐそこ』 彼女は俺達が座る位置からすぐ近くの国道のガードレール下を指差した。 『なるほど、幽霊にしては設定が細かいね』 『だから幽霊だって言ってるのに』 『そうだった、ごめん、それで?』 『それで夕暮れ時に、ダンボール箱を回収に海岸に行ったのよ。  海岸の反対側の国道沿いからそのダンボール箱を見つけて、 "あれだ、あった!"って思って車に気づかないで国道に飛び出しちゃったの。  それで、ひかれて死んじゃったのよ』 "死んじゃったの" その言葉に俺は一瞬 "ゾク"っとした。 随分と役に成り切ってんだな。なんでそこまでするんだ? 『で、その箱がなんで心残りに?』 『その箱、ちゃんと誰かが片したかしら?って』 『な、なるほど・・・幽霊の心残りっていうくらいだから、  もっと怨念じみた物かと思ってたけど、意外と生真面目な』 『私もそう思うの。"あんたは真面目過ぎ"ってよく言われてたし』 『普通に考えて誰かが片したはずではあるだろうけど』 『そうなんだけどね、誰がどんな風に片したのか気になるのよ。  それと美波が "私のせいで渚が" ってずっと自分を責めてるの。  だから私の心残りが消えれば美波の自責も消えるんじゃないかって』 そう言って彼女は少しうつむき加減になった。 月明りは今も俺達を優しく照らしてた。 そんな神秘的な風景に、幽霊という言葉がなんだか自然に思えてきた。 そんな風に思った時、俺はふとある事を思い出した・・・ 『そうだ。ねえ、3年前で子供の御神輿って言ってたよね』 『うん』 『ちょっと待って・・御神輿、確か・・・』 俺はスマホのグーグルストリートビューを立ち上げた。 『この場所を下見がてらストリートビューで見た時に確か・・・』 俺はストリートビューで海の家の近辺を再度見渡した。すると・・・ 『やっぱりそうだ!御神輿を担ぐ子供達が写ってる!  この写真の撮影日は・・・3年前、の夏祭りの日・・・  この写真、その日に撮影された写真だよね、見て!!』 『どれどれ?うん、確かにそう!この御神輿よ!!』 『じゃあその浜辺に忘れた箱も写ってるかも!』 俺達は注意深くゆっくりと国道沿いを注視して画面を進めた。 そして画面が今俺達が居る辺りに来た時だった・・・ 『あ!!ダンボール箱あるよ、一箱だけ写ってる!』 『ちょっと待って、拡大してみる、ええっと・・・どう!』 『うん、この箱だよ!絶対そう!倫太郎くんすごい!!』 『もっと良く見てみよう。この箱、何か絵が描いてある』 『うん、美波が"スイカの絵がある箱"って言ってたわ』 『確かにこれスイカの絵だ。ん?スイカ?スイ・・・あああ!!』 『どうしたの?急に大声で・・・』 『渚さん、今から俺のバイト先の海の家に行かない?』 『今から?別にいいけど・・・???』 俺達は海の家に向かった。 『ようこそ、ここが俺がバイトしてる海の家』 『うん、ここ、すごく良く知ってるよ』 『そっか、地元民だもんね。でさ、こっちこっち』 『ここって、海の家の物置場よね』 『うん、確かこの物置場の奥の方にあのスイカマークの箱が・・・』 俺達は手前の資材やら箱やらを次々にどけて奥へ進んだ。 そして一番奥の棚に、その箱は静かに佇んでいた・・・ 『やっぱりあった。これ、この写真の箱だよね』 『うん、写真の箱と同じ絵だね』 そう言って渚は箱を隅々まで見渡した。 『これ、美波の忘れた箱だ。ほら、ここ見て。  美波ってペンで書いてある。自分の箱に名前書いたんだね』 『この箱がここにあるって事は店長が、おじさんが片したんだな』 『うん、きっとそう、絶対そう、私やっとわかった、繋がった!』 そう言って彼女は今日一番の笑顔を見せた。 ___________ 『倫太郎くん、何かお礼しなくちゃだね』 『いやお礼なんて別に』 『ねえ倫太郎くん、ちょっと目をつぶってくれない?』 『え?なんで?』 『なんでって、恥ずかしいからに決まってるじゃない』 『恥ずかしいって、一体何を・・・』 『それはつぶってからのお楽しみ。ほら、つぶって』 『し、しゃあないな。なにするのか知らんけど・・・  (ふああ!これってもしかしてもしかするやつか!?)』 『じゃあ・・・いきます・・・』 俺がドギマギしながら目をつぶると彼女は、、 ゆっくり俺の体に手を回し、ピタっ、と俺に抱き着いた。 98-2 (これは、ハグ・・・!?あ、そういう事ね・・・) 『ありがとう、倫太郎くん、君を選んで本当によかった』 『選ぶ?選ぶってどういう・・・?』 『ダメ、まだ目を開けちゃ。もう少し、つぶってて・・・』 『あ、うん・・・』 (あったかい、あるじゃん体温、それからめっちゃ柔らかい。  何が幽霊だよ・・・) 『それからね、私、もう一つ心残りがあったの』 『どんな?』 『一度でいいから、恋をしたかった』 『恋?』 『私、今まで男の子と付き合った事とかないから、  こういうのも初めてで、だから上手くできてなかったらごめん。  でも私、今すごく頑張ってるんだよ、めっちゃ恥ずかしいけど。  今、私ができる精一杯の、倫太郎くんへのお礼だから』 『そうなんだ、うん、俺もその、嬉しい・・・』 『でも、お礼って言いながら本当は少しだけ違うの。  こうしてると、恋したいって想いも少し叶ったみたいで』 『何言ってんの、恋だってこれからいくらでも・・・』 『ううん、ダメなの、もう行かなきゃ』 『行くって、どこへ?』 『行くべきところ。ありがとう、元気でね・・・』 そう言って彼女は俺に回した手にギュッと力を込めた。 『さよなら、倫太郎くん』 その瞬間、今まであった渚の手や体の感触が突然消えた。 俺はパッと目を開けて辺りを見回したが彼女はどこにも居なかった。 『あれ!?え?渚さんどこ?あれ?ねえ・・・!?』 (渚、さん・・・) 俺はそのまま気を失ってしまった。 数時間後、目覚めた俺は思いもよらなかった事実を知る事になる。 To Be Continued ~次号、完結編へ続く~ (´o`)п(´o`*)п(´o`*)п ****************************     【編集後記】 還暦を過ぎたある人から、その人の10代後半くらいの時の話を、 恋した人に想いを伝えられないままその人が病気で亡くなってしまった話を、 聞いた事があります。 ただ見渡してみると、若くして亡くなった人や志半ばで亡くなった人は沢山いて、 病気や、事故や、災害や、戦争や、それから・・・ 私はその人達から沢山の力を貰っています。 それはものすごくシンプルなものです。 だからこそ、今生きている自分の命を燃やさなければと。 単純に、本当に単純にそう思うんです。 サボりたくなった時、手を抜きたくなった時、しんどい時、 その人達が力をくれたりします。 これを読んで下さった方に少しでも幸せを感じて欲しい、 そう思って書いているこのメルマガも、 その人達に貰った力がどこそこに入ってます。 さて、次号はいよいよ完結編。 一夜の出来事は夢だったのか、それとも・・・!? 今号も最後までお読み下さりありがとうございました。 m(__;)m ライティング兼編集長:メリーゴーランド

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