ラブレターは50年後に渡して -後編-■アースダンボール メルマガVOL139■2022年7月号-2

妻が50年もある秘密を抱えていた事を、 私はつい最近知った。 妻はその秘密の事をどう思っていたんだろうか? 信じるって、どういう気持ちだったのだろうか? (´o`)п(´o`)п(´o`)п **************************** ~前回までのあらすじ~ 私は安城烈(あんじょうれつ)。還暦男だ。 私にはジョニーとタカポンという50年来の親友が居る。 11歳の頃、私達三人は街はずれの空き地に秘密基地を作った。 ある日、私達は各々が好きな3人の女子に全員一緒に告白しようと、 各自が書いたラブレターを基地内のダンボール箱に一時保管した。 しかしその翌日、基地はショッピングモールの建設工事で取り壊され、 箱も箱の中身も、書いたラブレターも廃棄されたてしまっていた。 その後、私はその時ラブレターを渡すはずだった女性と結婚。 それから50年後。ショッピングモール50周年写真展示で、 撤去前の基地とあの箱を持った若い男性作業員の写真を発見する。 私は、今は70歳のその男性に会いに北海道へ飛んだ・・・ 前号の全文はこちらです↓ https://www.bestcarton.com/profile/magazin/2022-jul.html (´o`)п(´o`)п(´o`)п **************************** 北海道では70歳になった写真の人が出迎えてくれた。 50年経ってはいるが、写真の頃の面影がはっきりとあった。 『遠いとこよう来なさった。待ってましたよ、ずっとね』 『待ってた?ずっと?私を?』 『あなたかどうかはわかりませんでしたが、待っていました』 『あの、どういうこと、ですか・・・?』 『この箱を、箱の持ち主が取りに来るのをね』 そう言って老人は1箱のダンボール箱を目の前に出した。 それは紛れもない、私達のあの箱だった!! 『この箱、捨てられたんじゃなかったんですね・・・』 『当時、私はあのモール会社に就職したばかりの新人で、  モールの新規店舗立ち上げのスタッフでした。  土地買収も終わり、土地造成前の最終点検の時でした。  上役に "この箱と中のゴミを捨てておけ" と指示されました』 『あの時、確かに作業員さんも捨てたと言っていました』 『その時は捨てようと思ったんですが・・・  ふと、これはゴミじゃないのではないかと思えましてね。  一度持ち帰って箱の中をみる事にしました』 『そうだったんですか・・・それで、中身は?』 『確かにゴミと見紛うものばかりでしたが、  箱の一番底の方に手紙を一通、見つけました』 『一通?三通ではなく一通だけですか?』 『一通だけでした。他にもあったのですか?』 『ええ、まあ。きっとどこかに落ちてしまったんですね。  それで、その手紙は・・・?』 『ええ、ちゃんと保管してありますよ』 老人はそう言ってが手紙を差し出してくれた。 それは、私があの時、妻に書いたラブレターだった。 『これはあなたが書いたのですか?すまないと思いましたが、  封緘が無かったから開けて読ませてもらいました。  少し荒々しくて不器用な、でも情熱的で優しい、  とても想いがこもった、いい手紙です・・・』 『はい、私が同級生に書いた物です。いやはやお恥ずかしい』 『ただ、宛名は書いてあったが差出人が書いてなくてね』 『はい、渡す当日に仕上げの署名をしてから渡そうと』 『そういう事でしたか。ただ宛名しか手掛りが無くてね、  私は宛名の人物を探しました。そして2年くらい経って、  その手紙を渡しに宛名の女性を尋ねました。  丁度モールが開業する頃で、女性は中学生でした・・・』 『ええ!?尋ねた?渡した!?  だって私が妻に告白したのは高校生の頃・・・つまり、  告白の時は既にあの手紙の存在を妻は知っていた!?』 私は頭がしばらく回らなかった。 『それでその人は、妻はなんて!?』 『妻? ではあなたは宛名の人と結婚したんですね。  それは良かった、本当に良かった・・・  あの時、手紙を見たあなたの奥様はこう言っていました。  "この手紙の宛名は確かに私です。  珍しい名前ですし同姓同名の人もまずおりません。  そして手紙を書いた人にも、心当たりがあります。  ですが書いた人が100%その人とは限りませんし、  この手紙は、やはり本人から直接受け取りたい"  そして続けてこうおっしゃいました。  "この手紙が本当に私に届く運命ならいつか、  書いた人が貴方の元にこの手紙を取りに来るでしょう。  そして私は、その人から直接この手紙を受け取りたい。  受取れると、信じます。そう信じて待ちます。  それまでこの手紙をお預かりして頂けませんか?"    とね。  そして今日、あなたはここに来た。  あなたの奥様が信じた運命は現実になったんです』 ____________ 私は箱と手紙を受け取って帰路に就いた。 地元に戻り、その足でジョニーとタカポンに報告をした。 『ジョニー、タカポン、これ見ろよ!!』ε=ヾ(*~▽~)ノ 『レツ、これ、これって!!』(@Д@) 『ああ、そうそう!あの箱だよ~!!』(;^ロ^)w 『うわあああ~!!懐かしいい~!!』w(゚ロ゚)w 二人は自分の手紙の消滅が軽くショックだったようだが、 その夜はその箱をつまみに深夜まで一緒に飲み続けた。 話しても話しても話し足りない程の思い出が溢れてきた。 _____________ 翌朝、妻とはいつも通りの会話を交わした。 『おはよう』 『おはよう。昨夜は遅かったのね、なんか食べる?』 『うん、食べる』 『じゃあちょっと待っててね』 私は自分のよそよそしさを感じずにいられなかった。 だって妻は・・・あの手紙の事を知っていたんだ。 この50年、どんな気持ちで私と生きてくれたのだろう。 今も私の手から手紙が渡されると信じているのだろうか? もし渡されなければ、もし"最後まで"渡さなければ、 その時どんな気持ちになるんだろう・・・ 『なあ、あのさあ・・・』 『ん?なあに?』 『あ~いや、なんでも~、ない』 『ええ?ヘンな人・・・』 (ああどうしよう!?なんて言って渡せば!?) 私は地団太をしながら、あの老人の話を思い出していた。 (´-`).。oO 『あの、一つお聞きしたいのですが』 『ええ、なんでしょう?』 『どうしてこの箱を捨てなかったのですか?』 『ダンボール箱っていうのは人の心の受け皿、  みたいなもんなんじゃないでしょうかね。  触った時にね、気のせいかまだ温かかったんです。  誰かの心が、まだ入ってる気がしたんですよ』 『人の心の受け皿・・・?』 『この50年ずっと、あの時の温かさのままでした。  誰かがこの箱を想っていたからじゃ、ないでしょうかね』 (´-`).。oO 98-2 FIN ━━━━━━━━━━━━━━━     【編集後記】 自分の小学校くらいの時の恋や、 今のパートナーとの出会いの頃なんかを 思い出してる方もいらっしゃるかもしれませんね。 ダンボール箱が人の心の受け皿みたいなものなら、 いつかの貴方の想いや、 貴方を大切にしてくれた人の想いをしまったダンボール箱が、 貴方の近くにあったりしませんか? 少しだけそれを開けてみたくなったり、しませんか・・・? 最後までお読み下さりありがとうございました。 m(__;)m ライティング兼編集長:メリーゴーランド

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