~あなたを知るらむ~■アースダンボール メルマガVOL96■2020年10月号

96 父がもうすぐ定年退職する。 お祝いというか長年お疲れ様でしたってことで、 久しぶりに父や母や兄弟みんなで食事でもと思っている。 長男が父の定年祝いに食事をご馳走なんてごく普通だけど、 こんな時、僕は決まってあの時を思い出す。 (´o`)п(´o`)п(´o`)п(´o`)п(´o`)п ************************************************** それは僕が21歳の時だった。 僕は苦労して行かせて貰った大学を自主退学してしまった。 やめた理由だって説明にも値しないほど・・・ 思ってたより面白くも楽しくもない、意味を感じない。 ただ単にモラトリアムの中に居ただけだった。 そこで僕はひとまずアルバイトを始めた。 そのひとまずだって、今考えれば特に意味なんてない。 バイトしながらどっか就職先でも探そうくらいの程度。 まあ何もしないよりはましってくらいだった。 バイトはそれなりに忙しかった。そりゃそうだ。 21歳の若者が1日フルで働ければ雇う方だって使いやすい。 そしてバイトを始めてから一ヶ月後、初めての給料を貰った。 あくまでもそこだけ切り取った表現そすれば、 僕は今までにない金額の自由に使えるお金を稼いだ。 そのお金で、僕は思い違いをしてしまった。 何もわからずに、自分の力で稼いだと勘違いした。 _____________ 粋がった僕はその初バイト代で家族にご馳走するといい、 回転しているお寿司屋さんに家族みんなを誘った。 『みんな、何でも好きなもの注文して』( ̄¨ ̄) という僕の言葉に、母や兄弟達はテンション高めだった。 しかし、父だけが何故か浮かない顔をしていた・・・ 『ねえ母さん、父さんどっか調子でも悪いのかな?』(・_・?) そう母に聞いてみると。 『そうじゃないけど。でも何となく想像つくわ』(-_-) と母は言っていた。 皆でお腹いっぱいに食べ、僕は得意顔で会計を済ませた。 しかし帰宅後・・・ 父は誰も居ない所で僕に1万円を渡してこういった。 『これ、今日の会計代だ』( ̄д ̄) 『え!?いや、今日は俺のおごりだってば』(・_・?) 『いや、いい。気持ちだけ貰っとく』( ̄д ̄) 『いや、気持ちだけって、なんで』(`Д´) 『とにかく、いいから。今日は父さんが出す』( ̄д ̄) そう言って半ば強引にお札を受け取らされた。 そしてその時、それ以上の会話は無かった。 僕は起きたことが理解ができず、悶々として眠れなかった。 "人の行為を台無しにしやがって" あの時はそんな風にしか考えることができなかった。 そんな風にしか。 (´o`)п(´o`)п(´o`)п(´o`)п(´o`)п ************************************************** やがて僕も少しづつ自分の人生を前に進め、 正社員として就職もした。結婚もして子供も生まれた。 そして子供が成長して3歳くらいになった時だったと思う。 持ってるお菓子を半分にして『パパに半分あげる』と言った。 3歳の子供の純粋な他人を想う行為を見た時、 何故か、1万円札を返された時の父の顔が浮かんだ。 そしてあの時の父の想いが少し理解できた、気がした。 あの時の僕は、大事な人やものを守る為でもなく、 ましてや自分が誰かに守られていることも知らず、 ただ自分の虚栄心の為に、おごると言っていた。 父にはそれがわかっていたんだ。勿論、母も。 もしこの子が将来、あの時の僕と同じ事をしたら、 きっとあの時の父と同じ気持ちになるだろう。 ___________ 父は地元の工業高校を卒業後、すぐに今の会社に就職した。 19歳の時には結婚もし、20の時には僕も生まれていた。 そう、僕が大学を辞めてしまった年齢の時には、 家族を守る為に必死に頑張っていたんだ。 家族の為、誰かの為って事を身をもって知っていたんだ。 高校出の苦労も幾分あったと言っていたけど、 それでも必死に頑張って仕事も人格も認められて、 従業員150人を擁する大きな工場の工場長にもなった。 従業員も守った。会社も支えた。勿論家族も守った。 どう控えめに言っても、立派な人だ。 今思い返せば、僕はあの時の気づき以来ずっと、 父に追いつきたいと心のどこかで思っていたようだ。 (´o`)п(´o`)п(´o`)п(´o`)п(´o`)п ************************************************** でも、結局追いつけたと思えたことなど一度もない。 そしてそのまま、父は節目の定年を迎えようとしている。 今日、僕が催した祝いの席の父はずっと笑顔だ。 僕が定年する時には、こんな笑顔でいられるだろうか。 そもそも、親に追いつく、超えるってどういう事なんだ? 僕はそっと、笑顔の父に聞きてみた。 『なあ父さん、  父さんは高校卒業からずっと今の会社一筋だったよね。  ダンボール箱を作る仕事って、父さんにとって何だった?』( ゜∀゜) 『ええ? 珍しい事聞くな。そうだな、、、  父さんがダンボール箱を作ってたんじゃないんだよ。  ダンボール箱が父さんの人生を作ってくれてたんだよ』(´ー`) 『ええ?? どうゆうこと??』(*゜~゜*) 『どうゆうこともなんも、そういう事だ』(´ー`) 『そういう、もんなのか?』( ̄、 ̄*) 『ああ、そういうもんだ!』(´ー`) ダンボール箱が人生を作ってくれてた・・って・・?? 一生懸命考え込んでいる僕を、父は嬉しそうに見ていた。 『なんで嬉しそうなんだ?』と僕が聞くと、 『いや、そう聞いてくれたのがなんだか嬉しくてな』 と父はやっぱり笑って答えた。 僕はまだまだ父に追いつけなさそうだ。 FIN (※らむ≪読み:らん≫・・・〇〇だろう、等の推量を表す古語) (´o`)п(´o`)п(´o`)п(´o`)п(´o`)п **************************************************     【編集後記・へんしゅうこうき】 あれはいつぐらいだったでしょうか? あるダンボール屋さんの社長が私にこんなことを言いました。 『自分は生まれた時からダンボール屋だった。  だからダンボール箱を作る、売る大変さを身に染みて生きてきた。  これからもダンボール屋で生きていくと覚悟を決めている』と。 その言葉の真意をもう少し深く知りたいと思い、 私は素直にこう言いました。 『私にはそんな覚悟は無いです。  そんな私がこのメルマガを書いてていいのですか?』と。 するとその社長はこう言いました。 『君にそのような覚悟が無いのは理解している。でも、  例えそうだとしても、私がそのまま書くよりも  君が私の思いを理解した上で想いを優しく書いたほうが、  ずっと多くの人に理解されると思っている』と。 私は "そっか、そういうものか" と思いながらも、 "じゃあメルマガは僕が書くしかないじゃん"と納得もできました。 親の心子知らずという言葉があるように、 得てして目下の人は目上の人の想いを、子供は親の想いを、 理解できにくいものかもしれません。只それはそれとして、 分からないまでも何とか分かろうとする一生懸命さと、 一生懸命分かろうとしてくれる事への嬉しさが合わさった時、 よしんば目上目下、親子、だけの関係だけじゃなくて、 例えば会社なら他部署同士で分かり合おうとした時とかには、 いつにも増して素敵な商品やサービスが出来上がる気がします。 素敵なダンボール箱が、出来上がる気がします。 きっとあなたが携わる商品やサービスもそうじゃないですか? ところで、あるダンボール屋さんってどこかって? それはご想像にお任せという事で・・・ 今号も最後までお読み頂きありがとうございました。 m(__;)m 10月某日 ライティング兼編集長:メリーゴーランド

次のメルマガへ:2020年10月号-2 子犬のダンボ■アースダンボール メルマガVOL97■
前のメルマガへ:2020年9月号-2 ~イマジン~ 心に箱一つ■アースダンボール メルマガVOL95■

バックナンバー一覧に戻る

ダンボール専門店最大4000種類超え・ご注文累計100万件以上 創業70年 工場直営なので最短当日お引き取りも可能 ダンボール2.0

  1. ダンボール通販・購入 トップ
  2. 箱職人のメールマガジン
  3. 2020年10月号 ~あなたを知るらむ~■アースダンボール メルマガVOL96■